縄文時代のうつわ

 縄文土器は縄文時代を代表する遺物です。縄文時代とは縄文土器がつかわれた時代のことです。
 考古学研究のなかで土器は、時期をはかるものさしとしてあつかわれてきました。土器の文様や器形の変化などによって区分され(これらの区分を「型式」といいます)、前後関係や地域的な特徴が検討されています。たとえば関東地方の縄文土器は、現在のところ大きく50~60種類ぐらいに分けられ、それによって縄文時代のいつ頃なのかがわかります。

 ほかの時代の土器とくらべれば一目瞭然なのですが、縄文土器の特徴はその装飾にあります。縄文土器の装飾といえば、使うのに邪魔になるような突起がついていたり、カエルのような、ヘビのような、イノシシのような、なんとも奇妙な文様がつけられていたり、四コマ漫画のように土器のまわりにパターン化した文様が展開したり、とさまざまです。土器の装飾についてなみなみならぬ思いがあったのでしょう。

相模原市緑区 川尻中村(かわしりなかむら)遺跡
相模原市緑区 川尻中村(かわしりなかむら)遺跡

 土器の装飾について、精霊のような神様のようなものが表現されているといわれることがあります。また、土器の表面に展開する文様は当時の神話や物語であるともいわれます。しかし、その装飾から直接、その意味や物語を読みとることはできません。読みとろうとするとどうしてもそこに主観が入りこんでしまいます。 直接内容を知ることはできませんが、少なくとも現代人の我われが考える器(うつわ)とは違う思いをもって、当時の人は土器をつくり、使い、捨てていたのでしょう。

相模原市緑区 川尻中村(かわしりなかむら)遺跡
相模原市緑区 川尻中村(かわしりなかむら)遺跡

 土器の表面に彩色される場合があります。西富岡・向畑遺跡出土の漆塗り土器は、土器の表面にベンガラ(酸化鉄)を混ぜた赤漆や炭を混ぜた黒漆が土器の凹凸にあわせ塗り分けられています。質素な装飾は後世の大陸の影響であり、この派手な装飾こそが日本の美意識の原点だといわれます。

伊勢原市 西富岡・向畑(にしとみおか・むこうばた)遺跡
伊勢原市 西富岡・向畑(にしとみおか・むこうばた)遺跡

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